スイセンの毒性 間違って食べてしまった事例から学ぼう

日本水仙の咲く季節になりました。日本水仙が群生する海岸線などは、ツアーに組み込まれる人気スポットですね。

スイセン の花が咲くと、春が近づいていることを感じさせてくれます。

ところで、そのスイセン に毒があることを知っていますか。今回身近にあるスイセン を間違って食べてしまった事例から、なぜそうなったのか、また日頃気をつける点をみていきましょう。

スイセンの特徴と毒性

スイセンと言えば、名前のよく知れた球根植物で観賞用に栽培され、お正月の切り花としても出回っていますね。

まずは、特徴と毒性を見ていきます。

スイセンの特徴

  • ヒガンバナ科の多年草。
  • 原産は地中海沿岸
  • 属名 ナルシス(Narcissus)はギリシャ神話の青年の名前。 
  • 青年が、泉に映った自分の姿に恋して死んだ後に、水仙が咲いていたという伝承があり、ナルシストという言葉の語源。
  • 日本には室町時代より前に中国から伝来する。
  • 関東地方以西の海岸線近くでは野生化している。
  • 福井県の県花。

スイセンの毒性

  • スイセン は有毒植物で、全草が有毒
  • 有毒成分は、リコリンガランタミンタゼチンシュウ酸カルシウムなど。
  • 中でも鱗茎(球根部分)は毒成分が多い
  • 食中毒症状接触性皮膚炎症状を起こす。

 

ニホンズイセンという名前があるので、原産も東アジアかと思っていましたが、古い時代に遠い地中海から伝来した植物なんですね。

スイセンはよく見かける身近な植物ですが、全草に有毒成分を含んでいます。そんなスイセンを、スイセンと思わず間違って食べてしまった事例をまとめました。

スイセンを食べちゃった自分の話

まずは、自分の話をさせて下さい。

遡ること50年以上前、私が小学校低学年の頃。

風邪気味で体調を崩して寝ていた時に、父がおかゆを作ってくれました。

青味の入ったおかゆは、その時家に居た祖母と二人で、美味しく食べました。(父が食べたかどうかは、わかりません。)

ところが食べてちょっと経った頃、何だか吐き気がしてきました。

二人共、お腹の中の物を全部嘔吐。苦しかったのを覚えています。

結局嘔吐した後は1日も経たない内に落ち着いたので、病院に行かないまま過ごし、いつの間にか風邪も治りました。

 

父に後から聞くと、畑の端にニラがあったので摘んで帰って、おかゆに入れたとのこと。

普段畑に行かない父が、おかゆに入れる青味を探しに行ったのでしょう。花の咲いていない時期で、ニラとスイセンの葉を間違ってしまったようです。

まさに、スイセンの食中毒です。しかし毒が強くなかったおかげで、二人とも大事には至らなかったのは幸いでした。

スイセンを間違って食べた事例 

まずは、下記の患者数を見て下さい。

2008年~2015年の8年間のスイセン 中毒の患者数

  年     発生件数      患者総数      摂食者総数

2015年      6件        14人         14人
2014年      7件        23人         23人
2013年      0件         0人          0人
2012年      3件         7人          7人
2011年      4件        18人         28人
2010年      2件         6人          6人
2009年      2件        12人         15人
2008年      6件        15人         22人

厚生労働省発表

 

摂食者総数と患者総数が同じではないので、食べた全員が発症するとは限らないようです。

2013年は発生(スイセンを食べてしまった)件数がありませんが、その他の年は何件か中毒が発生しています。水仙を食べたなんて事例は、私のように昔に限ったことではないようです。

 

厚生省の資料にも発生事例が5件載っています。 

他にも調べてみると、最近でもスイセン中毒の報告がありましたので、2016年に起きた事例を紹介します。

毎日新聞2016年6月1日から引用

北海道の室蘭保健所は31日、西胆振地域の60代男性がスイセンニラと間違って食べたと見られる食中毒症状で死亡したと発表した。保健所によると、男性は29日、自宅敷地内に生えていたニラに似ている植物を採取して調理し、食べた。

その後、吐いたり下痢をしたりする食中毒症状となり、医療機関に運ばれたが31日に死亡した。

道立衛生研究所で調べたところ、男性が食べた植物から有毒成分のガランタミンが検出されたことなどから、同保健所はスイセンとニラを間違えたことによる食中毒と判断した。 

MEMO
ガランタミンは、ヒガンバナ科の植物に含まれる有毒成分。過剰摂取は、命に関わりますが、アルツハイマー病の治療薬としてに使われているようです。

2016.4.23 産経ニュースから引用

 石川県珠洲市で3月、農産物の直売所でスイセンがニラと間違えて販売され、買って食べた家族4人頭痛嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。

スイセンは、豚キムチの具材として使われていた。同県食品安全対策室によると、スイセンに含まれる毒性成分が原因の食中毒で、幸い全員が軽症だった。

同室によると、出荷した生産者がニラを栽培していた畑の近くでスイセンを育てており、「似ていたので間違えた」と話しているという。

 

また、兵庫県尼崎市で同月、アルコール依存症患者の自立を支援するNPO法人施設で、昼食を食べた職員や通所者11人のうち10人が吐き気などの症状を訴えた

保健所生活衛生課によると、スイセンに含まれる毒性成分による食中毒で、全員が軽症だった。

通所者がプランターのスイセンをネギと思い込み、昼食用の中華丼の具材として使用したことが原因だ。

同施設では以前、プランターでネギを育てていた。同課の担当者は「ネギとスイセンは見た目の形状が明らかに違うが、ネギと思い込んでいたので違いに気付かなかったようだ」と話す。

 

自分の体験からスイセンは毒性があまり強くなくて、重症にならないと思っていましたが、亡くなった方があったことにドキリとしました。

事例の共通点とスイセン毒で気を付ける点

3例を見ると、どれもスイセンを間違えて食べたというもの。はじめからスイセンを食べようとしたものではありません

間違えて食べた月を見ると3月5月。スイセン は花が咲き終わり、まだ葉が緑色をしている頃でしょうか。

 

ネギやニラなど葉が似ているものと間違った事件が多いですね。(私の場合を含めて)

(外国を見るとヨーロッパでは、自生するラッパスイセンの鱗茎をタマネギと間違って食べる事故が多くあるようです。)

それぞれの葉っぱだけを並べてみたら

<左から スイセン  ネギ ニラ>

葉っぱだけを見たら、確かに似ています。

見分け方はこちら→スイセンとニラを詳しく比較した参考サイト

まさか!スイセンを食べるなんて、あり得ないと思っていても実際に食中毒が起こっています。

販売されているものに混ざるのは論外ですが、自分で中毒を防ぐには

スイセンは、野菜の近くには植えないことが必要ですね。

そしてニラやネギを自分で摘み取って食べる時は、見た目で確認する以外に独特の匂いをしっかり確認する習慣をつけて、念には念を入れた方が良さそうです。

そしてアウトドアで野草を取る時にも、ノビル(野蒜)スイセンを間違って取り、食べて中毒になった事故が起こっています。

疑わしいものには、手を出さないことが大切でしょう。

ペットを飼っている方も、ペットが家の周りや散歩途中でスイセンを食べてしまわないように、気をつけてあげてくださいね。